一昔前の日本では、嫁入り道具のタンスに喪服着物を入れて持たせる風習があったとされるほど、喪服は着物が一般的でした。
しかし、現代では洋装の喪服を着る人が増えたため、着物の喪服を持っていてもタンスの中にしまったまま……というご家庭も多いかもしれません。
また、喪服を買い取ってもらったり、誰かに譲ったりするのは、何となく縁起が悪いと敬遠する方もいるでしょう。
この記事では、そんな着物の喪服の買取が可能かどうか、実際に買い取ってもらう際の注意点などを解説します。
着物の喪服を買い取ってもらう際の注意点
喪服は毎日着ることを想定した着物ではなく、葬儀・法事といった場面でのみ着用するものです。
また、近年では喪服も洋装が一般的になっていることから、あえて着物を購入する方も少ないものと推察されます。
そのため、着物買取で喪服を買い取ってもらうためには、以下の点に注意して買取を依頼することが大切です。
未使用品レベルのものを売る
和装の喪服は、そもそも中古で購入するという発想を持っている人が少なく、レンタルして対応するケースも珍しくありません。
しかし、未使用品やそのレベルの状態の良さを維持している喪服であれば、再販の可能性を考慮して買い取ってもらえる可能性があります。
セットで買い取ってもらう
喪服は、基本的に夏冬で極端にデザインが変わることはないものの、夏は薄くて通気性が良く、冬は厚手で保温機能が高いものが多く見られます。
加えて、正喪服・準喪服・略喪服といった種類の違いもあることから、すべてを用意するのは大変です。
そのような事情もあり、買取業者の中には「夏冬セットで売ってくれるならOK」とするところもあります。
帯や草履・バッグなどがあれば、そちらも合わせて出すと査定額アップにつながります。
正喪服、準喪服、略喪服の違い
喪服を買い取ってもらう際は、それぞれの喪服の種類にも注意しましょう。
いざ必要になった際、自宅にあった喪服を売ってしまうと、新しく用意しなければなりません。
喪服には、「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3種類があり、それぞれフォーマル度や用途が異なります。
以下、それぞれの特徴をご紹介します。
正喪服
正喪服は、最も格式高い喪服で、主に遺族や葬儀の主催者が着用します。
男性の場合、紋付・羽織は黒の羽二重、家紋は五つ紋というのがスタンダードです。
女性の場合は、黒紋付に黒無地の帯を締めるのが一般的とされます。
また、男女ともに白の足袋・黒の草履を着用します。
準喪服
準喪服は、正喪服に次ぐ格式の喪服で、喪主や遺族だけでなく参列者も着ることがあります。
男性の場合は、三つ紋または一つ紋の入った、黒以外の無地・縞の紋付長着に、染め抜きの五つ紋が入った黒い羽織、縞地の袴、グレーや紺などの薄い色の帯を合わせる形になります。
女性の場合は、三つ紋または一つ紋の入った、色無地や江戸小紋などの寒色系の着物に対して、黒の帯・帯締め・帯揚げ・草履・白の長襦袢・半衿・足袋を合わせる形になります。
近年では、ほとんどの準喪服が洋装となっており、和装を見かける機会は少ないかもしれません。
略喪服
略喪服は、仮通夜・三回忌以降の法事で着用するケースが多い喪服です。
こちらもほとんど和装を見かけませんが、男性・女性それぞれの着物の喪服には、次のような特徴があります。
男性の場合 | ●黒以外の無地または縞の長着に、三つ紋または一つ紋の入った黒い羽織、グレーや紺色など控えめな色の帯を合わせる ●足袋は白を基本とするが、周囲に合わせて黒・紺の足袋にしてもよい ●履物は雪駄または畳表の草履 |
女性の場合 | ●三つ紋または一つ紋の入った寒色系の着物に、黒の帯・帯締め・帯揚げ・草履・白の長襦袢・半衿・足袋を合わせる ●無地が基本だが、江戸小紋や地味な小紋、紬でもよいとされる |
家紋が入っている喪服は買取してもらえる?
ここまでお伝えしてきた通り、和装の着物には「家紋」が入っていることが多い傾向にあります。
ご先祖さまや家族との繋がりを表す家紋は、親族間の絆を深めるものではありますが、着られる人が限られてしまうデメリットもあります。
そのため、家紋が入った喪服を売るのは、苦労することが多いかもしれません。
ただし、例えば「五三の桐」など誰でも使える紋もあることから、そのような喪服は買取を依頼してみましょう。
まとめ
喪服は着物買取であまり好まれない傾向にあることから、基本的には未使用品レベルの状態のものを売るイメージで考えておきましょう。
また、夏冬セットで買取を依頼するなど、まとめ売りすると査定額がアップするかもしれません。
喪服には3つの種類があり、それぞれを着用する状況も異なるため、自分に必要なものは取っておくことをおすすめします。
なお、家紋が入った喪服に関しては、買い取ってもらえない可能性もあるため注意しましょう。